最終更新2010/9/7
・DC調整を追加
前回更新分
・カスタマイズに追加
・調整方法の誤記修正
・動かないときの対処追加

HA10miniキット説明書

とりあえずコミケ頒布の基板の説明とケース加工についての説明です.
そのうちキット全体に対しての説明も上げたいと思いますが,まずはキットがうちに届いてからということで^^;

ただし,予め言っておきますが,トランジスタのはんだ付けが相当大変です.小さいです. なので自信がある人だけこのキットにチャレンジしてください. 自信がない人は後日受付予定のトランジスタ実装済み版か完成版を利用してください. トランジスタのはんだ付けが難しくて組み立てられませんでした,という苦情は受け付けませんw

HA10miniってなに?

HA10miniとは超小型ディスクリートヘッドホンアンプ(HPA)です. 箱のサイズが55mm×75mm×20mmと小型ながら,OPアンプなどのICは一切使わず, トランジスタだけで増幅回路が組まれたアンプです.
また,電源は単三電池2本の±1.2Vと,とても低電圧なのも特徴です. 昇圧回路などは使わず,そのまま電池電圧を利用していますが,T1やER4Sなどの 鳴らしにくいと言われているヘッドホンでも余裕で鳴らすことができます.
電源利用効率が高いことから電池のもちもよく,eneloopを使えば連続で40時間程度はもつはずです. またもしなくなってしまってもその辺で売っている電池に交換できるのでポータブルするのにもってこいw

性能などはSTRVのサイトの紹介ページを見てください.

頒布は制作者STRVのblogにて受付予定です. 基板単品はすでにコミケにて頒布済みです.

概観

おもて
うら
基板は3枚が面付けされています. つながっている部分を折るか切って使ってください.折るときは基板側に傷がつかないように気をつけてください. またバリが残っていると箱に入らない場合があるのでヤスリ等で綺麗にとってください.

基板の表部分のパターン図です. 抵抗の部品番号を参照するのに使ってください.
同様に裏面です.
10/08/31
シルクに間違いが見つかりました!! R22とR42が逆になっています.シルクでR22と書かれている場所に2KΩ,R42と書かれている場所に15(10)Ωを取り付けてください.
この図はすでにシルクが訂正されています.なのでこの図のR22とR42に正しく抵抗を取り付ければ良いということになります.

回路図

部品表はこの回路図の部品番号を元にしています.基板が三枚にわかれているので注意が必要です.
部品定数変更しました.回路図中の値も更新しています. あとにも書きますが,C1,C2,C4,C5,R7,R8,R29,R30は実装しません.
10/08/29
抵抗の値に間違いが有りました!! 旧回路図中R15,16とR17,18がそれぞれ逆になっていました.現在のものが正しくなっています.


部品表

基板一枚分(ステレオ分)の部品一覧です。
部品番号 部品 入手先
C1,2,4,5 フィルムコンデンサ
実装しません
4
C3,6 フィルムコンデンサ 0.1uF
積層セラミックコンデンサはだめです.
2 マルツ 千石 秋月
C7,8 電解コンデンサ SEPC ニッケミKZE等
2.5V以上 1000uF以上推奨
Φ10.5mm×13mm程度まで使用可能
2 マルツ 千石 三栄
R1-4,23-26 抵抗 100Ω 1/8W以上 8 マルツ 千石
R5,6,27,28 抵抗 390Ω 1/8W以上 4 マルツ 千石
R9-12,31-34 抵抗 2.2Ω 1/4W以上
2Ω付近なら大体OK
8 マルツ 千石
R13,14,17,18,35-38 抵抗 10Ω 1/8W以上 8 マルツ 千石
R15,16,39,40 抵抗 5Ω 1/8W以上
4.7ΩでOK
4 マルツ 千石
R22,44 抵抗 15Ω 1/4W以上
10Ωでも問題ないはずです.手に入れやすい方で.
2 マルツ 千石
R19,41 半固定抵抗 500Ω 1/12W以上
表面実装品
2 マルツ 千石
R20,21,42,43 抵抗 2KΩ 1/8W以上 4 マルツ 千石
R45,46 抵抗 1KΩ 1/8W以上 2 マルツ 千石
R47 抵抗
LEDの電流制限用です.チップが入手しにくい場合は,下記の説明の通り,普通のリード品でも構いません.
値の求め方も下記を参考してください.
1 マルツ
Tr1,3,6,8,10,12,14,16,18,
20,22,25,27,29,31,33,35,37
トランジスタ 2SC4116
SC-70のなら置き換え可能だと思われます.
18 秋月 マルツ
Tr2,4,5,7,9,11,13,15,17,
21,23,24,26,28,30,32,34,36
トランジスタ 2SA1586
SC-70のなら置き換え可能だと思われます.
18 秋月 マルツ
Tr19,38 J-FET 2SK170
基板のシルクが逆向きになってます.反対向きに実装して下さい.
2 秋月 マルツ
VR1 9mm角ボリューム 20KΩ 1 マルツorビスパorALPS()
  φ3.5mmジャック
ちょっと強度が心配だけど,こっちの方が箱から絶縁しやすいのでいいかも.
2 マルツ(10個入りしか無いですが,安いし,普通の基板に刺さるので便利です.)
SW1 2回路波動スイッチ
上側の足二本を切り落として使います.
1 マルツ
LED1 LED 3mm
赤・黄緑・黄色・オレンジあたりなら何でもOK.
1 マルツ 千石 秋月
CN1-4 2×2ピンヘッダ
長いものから適当に切ってください.
4 マルツ 秋月 千石
CN5,6 2×5ピンソケット
真ん中の二本の端子を抜いて使います.
2 マルツ 秋月 千石
CN7,8 1×4ピンヘッダ
長いものから適当に切ってください.
2 マルツ 秋月 千石
CN9,10 1×4ピンソケット
この長さのものはないので,1×10から二つとか作ってください.
2 マルツ 秋月 千石
電池端子 5mm×15mmくらい
リン青銅板や白銅の板から切りだしてください.
4 マルツほか
  テスト端子 おこのみで 千石 マルツ

ボリュームはリンクマンのがお勧めです。
音質的にALPSのRK097より遥かにいいと思います.ただ熱に弱いのではんだ付けするときはボリュームを最小に絞った状態ではんだづけしてください. よく「ギャングエラーが大きい」という評判を耳にしますが,それははんだ付け時に熱をかけすぎて壊しているだけです. 自分は十個以上使ってきましたが,一個もギャングエラーを感じたことはありません.手早くささっとはんだづけしましょう.
ちなみにマルツ以外にも,ビスパにて同じものが取り扱われています.
抵抗はこのシリーズとかREXとかREYとか。好きなものをどうぞ。
またLMFQは同じくビスパにて同じものの取り扱いがあります.
どちらとも型番は違いますが,中身は同じものですよ.

コンデンサは入るものを選んでください.特にzobelのフィルムコンはスペースがせまめなので注意が必要です. WIMAとかは足を曲げて二つが重なるようにすれば収まるかと思います…
自分はニッセイのMMTを使ってますが,ニッセイは倒産してしまったので推奨するわけにはいかなくて^^;

箱はテイシンのTC-2かTC-102にぴったり合うように作ってあります.加工は一面だけ図(準備中)のように加工してください.

また,表内にも書きましたが,FETはシルクが間違っています.逆向きに実装してください.

LED

箱にわざと小さめの穴しか開けていません.見た目の問題です.
なので箱にあわせて図の用に内側から穴に当たるようにLEDの位置を調整してください. また,抵抗はLEDに直接ハンダ付けして,まとめて実装してもいいかもしれません. リード品を使う場合にはR47のパターンばジャンパしといてください.

またこの基板は電源電圧が合計2.4V〜3.0V程度と低めです.そのため白や青などのLEDは使えない可能性が高いです. 買うときに順方向電圧をしっかり確認してください. R47の値はR=(V_BATT-V_F)/0.001で計算してみてください.V_BATTは電源電圧で,充電電池を使うなら2.4V程度,アルカリなら3.0V程度のはずです. どちらでも大きな違いは有りませんが,アルカリに最適化すると充電電池だとつかないかもしれないです. V_FはLEDの順方向電圧です.最後の0.001はLEDに流す電流です.20mAとか流して明るくしたい人はそうしてください. けど,回路全体の消費電流は50mA程度のはずなので,LEDをそんなに明るくすると,明らかに電池のもちが悪くなります.

このLEDは特に制御していないので電池残量で明るさが変化すると思います. 音がなってても「暗くなったなぁ」と思ったら電池の交換時かもしれません.

電池の端子

一番悩んだ部分でもある場所です. 市販の電池ボックスを使うと大きくなるため自作することにしました.なのでここの端子は自分で作る必要があります (ケース付きキットは完成品端子がつくかも?).
0.4mm厚程度のリン青銅板または白銅板といったバネ用の板を使って,上図の用に折り曲げて下図のように基板にはんだ付けしてください. GND側の端子は箱との間にスポンジを入れておくといいかもしれません.

この部分はどうしても弱いので,ヘタってきたと思ったら自分で曲げ直してください.

また,はんだ付けをするときは図(準備中)のようにはんだめっきして,その上に端子をおいてはんだ付け固定します. その上で図(準備中)のように部品の足などを使って補強をして,最終固定のはんだ付けをします.こうすることで十分な強度が保てるはずです. また,端子が通る穴がメッキ処理されなかったので,ここにははんだがのりません.のらなくても大丈夫なはずなので無理にはんだ付けしようと思わなくて良いです.

箱の加工

箱を加工するのに必要な型紙を用意しました.pdf形式になっているのでダウンロードして印刷してください. A4にそのまま印刷すればサイズは合うはずです. スイッチの角穴は若干大きめに記述しています. これを印刷して箱に貼り付けて加工すると良いでしょう.

また,箱には基板が接触してショートしないようにテープ類を貼っておいてください. 一応塗装してあるので簡単にはショートしないと思いますが念のためです. また,一番大きい基板と箱の間には3〜4mmの厚手なテープを貼っておくことで電池の振動防止にもいいかと思います.

その他注意事項

・スルーホールの処理
格安基板屋で作ってるため、時々半田カスが残っていたりするようです。そのときは部品の足でつつけばとれます。

・ヘッドホン端子の処理
コネクタ部分が基板に当たるのを忘れていました.なので基板側かコネクタ側のどちらかを削ってしっかり奥まで刺さるようにしてください.


・DC直結
このアンプは入力にも出力にもカップリングコンデンサが入っていないDC直結となっています. そのため,DCが漏れている機器につなぐとヘッドホンを壊しますので注意してください. 心配な場合は図(準備中)のようにカップリングコンデンサを入れてください.かなり無理が有りますが…

・2階基板の足処理
2階になる小さい基板に取り付ける部品の足はトランジスタよりも飛び出さないようにしたほうが安心です. なのではんだ付けするまえに足を基板すれすれで切ってからはんだ付けして方がいいかもしれません. トランジスタが一番高くなっていれば安心です.

・FETの向き
上にも書いてますが,シルクが逆向きです.J-FETは構造的に逆向きでも問題なく動くはずですが, なんか,向き変えると特性が若干良くなったようなので,とりあえず直してください.

・DCアンプ
このアンプは直流まで増幅するアンプになっています.そのため,入力にDC漏れのある機器をつなぐと そのままDCを増幅してしまいます.DCが出力乗っているとヘッドホンを壊してしまう可能性が有ります. 注意してください.


調整方法

こいつもは片chにつき一箇所の調整が必要となります。調整するのはR19,41です。
めんどくさいので以後は回路図の上の分の部品番号で説明します.下の分は脳内補完してください.

そもそも今回のキットは致命的な調整しにくい問題があります.3枚の基板を組立てないと正常に動作しないのに, 組み立てると調整ネジが回せません(ぉ
なので,分解・組み立てを繰り返しての調整になるので覚悟してください.

さらに勘違いしていて,基板の一階と二階でチャンネルを左右逆に組んでしまいました. なので半固定抵抗が付いているのと反対側に実装されている終段バイアスが変化します. よく部品番号を確認してください.
半固定抵抗は出力のバイアス電流を可変するためのボリュームです。 電源をはじめて入れるときは左いっぱいにまわすと, 抵抗値は最大となり、バイアス電流は最小となります。 これまた間違えました.R19は左に回すほど電流が多くなり,R41は右に回すほど電流が大きくなります.すみません.
とりあえずボリュームを真ん中にした状態で電源を入れます.この時のR9〜12の電圧を測って終段のバイアス電流を計測します. 基本的にはどれも10mA程度を目指していきますが,一発では決まらないでしょう.なんども繰り返し調整していく必要があります. 一応,回転角度と電流は比例に近い関係は成り立っているはずなので,抵抗表面の目盛を参考にしてみてください.
ちなみにR9〜R12はどれも同じ値になるはずです.これがもし2mA以上違うのであればはんだ付け不良がありえるかとおもいます.

ただ,抵抗値の関係からこの可変抵抗の調整は数度の範囲で行う必要があります. ごくごく僅かな調整で大きく電流が変わるので頑張って調整してください.

ここのバイアス電流で音の傾向は変わってきます.好みで変えてみてください.抵抗にマジックでマーキングしておくといいかも. 設計では50mA位流しても問題ないはずです.このアンプはせいぜい30mAがいいところみたいでした.
大きな値にした場合にはすぐに持ち運んだりせず,ずっと電源を入れてみてバイアスを測り続けてください. 30分くらい電源を入れっぱなしにして,大きく電流変動しないのであれば問題ないと思います.やばい時はどんどんバイアス電流が大きくなります. その場合にはバイアス電流を小さくしてください.
このバイアス電流が回路の消費電力の中で一番大きいので,電池の持ち時間にも影響します.
ただ,今回のHA10miniではトランジスタひとつにつき10mA程度流すのが一番歪率が下がるようです.電池のもちも良くなるのでこれくらいをおすすめします. また電源電圧でも変化するので,電池が満タンの状態で10〜15mA位に設定すると一番歪率が下がる状態でアンプを使えるはずです. なのでこの値をHA10miniの基本動作電流とします.もちろん上記の電流を流してもいいと思いますが.

またバイアスの設定ができたら出力のDCを測ってください. 一部のハンダ付けがミスっていても,ちゃんと調整できるのにDCが出たりすることもあります. DCが20mV超えている場合には何か間違っているところがあると思います. どうも,このトランジスタ,ばらつくみたいです.DCが大きい場合には下記の方法で調整するのもありです.

DCオフセットの調整

トランジスタのばらつきか,ハンダ付けが下手くそなせいかわかりませんが,時々DCオフセットが 大きくなってしまうようです.なのでDCオフセットが10mV以上出るような場合は調整することをおすすめします.

まずDCオフセットを測ります.測るときはボリュームを最大にして,テスタのマイナスを基板のGNDに,プラスを基板のR_OUTかL_OUTにつないで測ります. このときプラスのDCが漏れていた場合はR4に,マイナスのDCが漏れていた場合にはR3に抵抗を並列接続します. で,抵抗値を下げます.もちろん反対のchならR25,26ですね. この並列につなぐ抵抗の値でDCの大きさを調整します.100Ωを並列につないで抵抗値を半分にすれば 15mV位DCが変化するはずです.うまく抵抗値を調整できれば±5mVにも十分収められるでしょう.

ちなみに電源を入れた直後から温度が上がり続ける間はどんどんDCが変化するので, 1分くらい待ってからDCの測定と調整をするようにしましょう.

カスタマイズ

性能をアップするためにいくつかのポイントがあります.

・ボリュームのグラウンド
こんな感じで銅箔テープを使ってボリュームの金属部分をグランドを回路のグランドに落とすノイズ対策に有効です.
表側は特にハンダ付けしなくてもいいと思いますが,しっかり接触していることを確認しましょう. また,このような処置をした場合にはヘッドホン端子から箱にグランドが落ちてしまうと良くないので, こっちの端子にしたほうが いいと思います.キットはこちらを採用するかも.

・終段トランジスタの変更
とりあえず実装面積優先でSC-70というサイズのトランジスタを利用したわけですが, どうにも特性を出すのが難しいです.ここのトランジスタを亀の子でパラにしたり,2SC3325/2SA1313に変更したりすると 重い負荷でも特性が大きく変化しないで済むことを確認しました. 後者のトランジスタペアは前は秋月で扱ってたものですが最近はないので困ってます…
SC-59であればそのまま基板に載せることができるので,容量が大きなトランジスタに交換してみるといいかもしれません. その時はバイアス電流を20mA程度にするとよさそうでした.

動かないときは

基本的にはHA10の時と同じです.順番にバイアスが正しいか確認していってください. 特にトランジスタが小さいのではんだ付け不良が起きやすいと思います. また,チェック中にテスタ棒をすべらせたりも注意してください.

チェックするときの基本は,なにも入力しないで上下対称となっている抵抗,例えばR13とR14,の電圧を計測して 同じ値になっているかチェックします.特にR13〜R18は上下で1mV程度しか差が出ないはずです. その他の場所についてはある程度の誤差は起こりえます.
ちなみに図のTr1のコレクタ(真ん中の足)と左上のスルーホールは近接していますが,違う信号ラインです. まとめてハンダ付けしてしまわないように気をつけてください.同様にTr3とかもそうなっています.

その他

また、わからないこと、動作報告などあればblogやメールでお願いします。
by STRV